こんにちは!マルチリンガールわた (🐤@norinoricotton)です😉
最近、海外の多言語環境で育児をされているフォロワーさんのツイートを拝見して、いろいろと考えさせられることがありました🌍
私は育児経験はありませんが、幼少期から多言語・多文化環境でバイリンガル教育を受けた者です。
結果から言えば「バイリンガル教育は成功」し、今やマルチリンガルになったわけですし、環境の許す限りであるなら、バイリンガル教育に賛成です🙋♀️
ただ、実体験から言うと、その過程は決して良いことばかりではありませんでした。
今回は、私が実際に感じた「バイリンガル教育」の負の可能性に焦点を当ててみます👀
「バイリンガル教育」とひとことで言っても、置かれた環境や条件は千差万別、人それぞれなので、あくまでも私のいちケース(事例)としてご参考になれば嬉しいです。
- 多言語・多文化環境で育児をしている人
- 「子どもをバイリンガルにしよう」と考えている人
- 「バイリンガル教育とか最高〜♪」と考えている人
スペイン語ネイティブはポルトガル語・フランス語・イタリア語が理解できるか検証!
バイリンガルの定義
そもそも「バイリンガル」とは何を指しているのでしょうか?
辞書を引くと…
バイリンガル【bilingual】
・2か国語を母語として話すこと。また、その人。(小学館デジタル大辞泉)
・二か国語を自由に話すこと。また、その人。(明鏡国語辞典)
・状況に応じて二つの言語を自由に使う能力があること。また、その人。(三省堂大辞林)
このような感じで、母語(第一言語)なのかどうかがはっきりはしないものの、ざっくりと「二つの言語を流暢に話すことができる」ということみたいですね😅
言語学でいう「バイリンガル」とは…
一方、言語学の分野では、「バイリンガル」を様々なカテゴリーに分類する研究者もいます。
受動型バイリンガル | 母語(第一言語)とは別の言語を聞いて理解できるが、話せない。 |
---|---|
優性型バイリンガル | 二つの言語を操るが、片方の言語のみ母語(第一言語)並みに話すことができ、明らかな優性が見られる。 |
均衡型バイリンガル | 二つの言語を操るが、どちらの言語も母語(第一言語)話者並みに話せない。 |
同等型バイリンガル | 二つの言語を操り、どちらも母語(第一言語)話者並みに話せる。 |
*用語や解説は、わたが英語から翻訳したものです。
最後の同等型バイリンガルが、「バイリンガル」と聞いたときにパッと想像する感じでしょうか🤔
また、リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングの4技能のレベルでバイリンガルを分類する方法もあります。
その場合、ライティング>リーディング>スピーキング>リスニングの順に習得が難しいとされており、上のバイリンガル4分類にも当てはめることができます。
そのほか、第一言語と第二言語を習得した時期による分類など、様々な分類がなされています👀
こちらの英語の記事にもバイリンガルの分類基準を解説しているので、ぜひ😊
Bilingual Communication: Conditions, Benefits and Challenges
「完璧なバイリンガル」になる難しさ
多くの日本人が漠然とそう思っているのではないでしょうか?
以前【帰国子女は空気読めない案件】帰国子女が考えてみたの記事でも触れましたが、海外育ちの子供が、両親が日本人だからといって、日本語が話せるようになるわけではありません。
同じように、両親がそれぞれ別の母語(第一言語)だからといって、子供が両親の言語をどちらも完璧に身につけるわけではありません。
子供の言語習得の過程は非常に複雑ですが、一つ言えることは「必要でない限り身につかない」ということです。
海外に住んでいる日本人家族の場合
家庭内でしか日本語を使わない場合、子どもにとって外部で得る全ての情報は学校で使う言語、習い事や現地で使われている言語から、ということになります。
幼少期の子供が家の外で得る情報は膨大です。
一日いちにちが新しい発見の連続!
新しい人や出来事、現象に触れ、それらを表現する言葉も一緒に吸収し、身につけていくのです。
脳は、その凄まじい量の情報を日本語ではない別の言語で毎日処理しインプットします。
しかし、いざ家族に今日あったことを伝えようとなると、わざわざ「日本語に変換する」という余計な過程を踏まないといけないわけです。
当たり前ながら、子供で人生で初めて経験した事象を、別の言語(日本語)で表現するのは難しいですし、何よりめんどくさいです。
目的意識を持った大人が「勉強のために」語学をするのとはわけが違います。
そして日本語でのインプットが、そのほかの言語のインプットより下回っていれば、自ずとその子は日本語が相対的に苦手になっていくでしょう。
インプットがなければ、それ以上のアウトプットはできないからです。
子供が高学年になればなるほど、片方の言語の学習量(インプット)は多くなるわけですから、バランスは崩れていきます。
つまり海外にいる日本人の場合、周りの大人(多くの場合家族)がかなり頑張って、日本語でのインプットをするよう、またできるよう環境を整えなければ、いわゆる「バイリンガル」にはなりません。
そこに周りや本人の固い意志は不可欠です。
両親が別々の言語を話す場合
父親と母親がそれぞれ違う母語(第一言語)の場合「父親は自分の母語のみで、母親は自分の母語のみで子どもに接する」ことで、子供をバイリンガルにする、という方法があります。
子供は「お父さんと話すとき」「お母さんと話すとき」それぞれ別の言語を話さなければいけない、ほかの言語だと通じない、という状況ができ、ある意味必要に駆られて言語を習得するという図です。
しかしこのルールが徹底されず、親が子供の話す言語に合わせて上げたりしていれば、当然効果は薄くなります。
聞けば理解はできるけど、話すことはできない優性型バイリンガルになるかもしれません。
また、片親の母語(第一言語)と子供が家の外で接する言語が同じであれば、当然インプット量の多いその言語が優位になるので、もう片方の言語は相対的に苦手になるかもしれません。
上記の海外に住んでいる日本人家族の例と同じように、子供が高学年になればなるほど、片方の言語の学習量(インプット)は多くなるわけですから、バランスは崩れていきます。
このように、いわゆる「完璧なバイリンガル」になるのは、結構骨が折れるんです😅
わたが日西バイリンガルになった背景
私は2歳の時、日本人の両親と6つ年上の兄(当時8歳)と共に、家族でペルー🇵🇪に渡りました。
現地の公用語はスペイン語。
両親もやはり、
わた母
と楽観視していました(笑)
「完璧なバイリンガル」から怪しい日本語へ
現地の幼稚園に預けられ、家では日本語のみの生活が始まり、確かに物心つく頃には、日本語とスペイン語の「完璧なバイリンガル」になっていたそうです。
しかし現地の小学校に入学して以降、私の日本語がかなり怪しくなってきました💦
学校から帰ってきた私は、母にスペイン語でマシンガントークをし、帰宅後しばらく経たないと日本語に戻らなかったり。
さらに、スペイン語の直訳調の日本語も増えたりしたそうです。
例えば、家で「空気を飲みたい」って言ったらしいんだけど、たぶんスペイン語のQuiero tomar aire. (散歩に出たい、外に行きたい)の直訳(笑)
お魚さんみたいですね🐟
わた母
危機感を覚えた母は、いろいろな対策を取りました。
とにかく「日本」に触れること
一番覚えているのは、漢字検定ドリルでしょうか。
これは、本当に嫌だったので余計に覚えているのですが、市販のもの以外に、母が作ってくれた漢字の練習帳を毎晩書かされました。
漢字や熟語は日本文化の縮図のようなものなので、漢字一文字、熟語ひとつ理解する過程では、それが何を意味していて、どういう時に使うのかを考える必要があります。
日本語の語彙力だけでなく、日本文化や社会の理解に繋がったと思います。
また、日本語の本をたくさん読まされました。
母が文学少女だったのもあり、その情熱に影響され、おかげで日頃から本を読む習慣が身につきました。
その後、現地校から日本人学校に転校したので、怪しい日本語に歯止めはかかりました😅
習得後は触れ続けること
一方で、スペイン語をアカデミックな場面で学ぶ機会は減り、知人や知り合いと話すのみとなりました。
私はバカの1つ覚えのようにあちこちで話したり書いたりしていることだが、私が知っている限りの帰国子女で英語力を維持(および上達)している人達は例外なく日本に帰国後も英語を読んでいる。新聞であれ小説であれ。例え英語を話すことがなくなっても読むことによって維持できている。
— 林 剛司 (@Haya_Take) 2018年8月23日
翻訳家、大学英語講師であり英語教育の専門家でもある林剛司氏も、英語圏から日本に帰国した帰国子女が英語に触れ続けることによって英語力を維持・向上させていると言います。
私の場合も、日本人学校に入り、スペイン語に触れる機会が減り、インターナショナルスクールに入学後、今度は日本語に触れる機会が減ることになりました。
でも、日常生活以外で、新聞や本を読んだりすることで、いずれの言語もレベルを維持することができたようです。
一度その言語を習得した後は、子供の年齢に応じたレベルの文章にたくさん触れ続けることが、いわゆる「完璧なバイリンガル」になるひとつの鍵となります。
また、母は、私たち兄妹に、日本語しか話せない祖父母と意思疎通ができなくなったり、帰国した際に困ったりしないようにと頑張ってくれました。
将来的にどの国に住むか分からない時点で、たくさんの可能性と選択肢を与えてくれた両親には本当に感謝したいです🙏
バイリンガル教育の致命的なデメリット
バイリンガル教育というと「二つの言語を操ることができる」ようになり、進学や就職などに有利である、という良い面ばかり取り上げられます。
しかし、実際には負の面も存在するのです。
アイデンティティーの確立
あなたは、自分が「日本人(もしくは〇〇人)である」ということに疑問を感じたことはありますか?
多くの人が疑問にさえ感じない当たり前のことが、バイリンガル環境に置かれた子供は感じ得るんです。
私は、日本語もスペイン語もネイティブスピーカーである日本人としてペルーで育ちました。
周りのペルー人たちと同じようにスペイン語が話せるのに、時には「日本人である」と言われ、時には「ペルー人」であると言われました。
「日本とペルー、どっちが好き?」と言う答えようのない質問もよくされました。
大人にとってはなんでもない小さいことでも、子供にとってはとてつもなくストレスやコンプレックスに感じることもあります。
以前【帰国子女は空気読めない案件】帰国子女が考えてみたでもご紹介しましたが、帰国子女にとって「帰国子女である」と言うことがいちアイデンティティに過ぎないのと同じように、バイリンガルにとっても「バイリンガルである」と言うことはいちアイデンティティに過ぎません。
【帰国子女は空気読めない案件】「あるある」を帰国子女が考えてみた
吃音障害(どもり)に苦しんだ10代
吃音(きつおん)障害とは、吃音症やどもりとも呼ばれるもので、話す際に最初の語頭で突っ掛かって、発話が困難である症状です。
幼少期の子供の20人に一人がなるとされ、そのうち7割は自然に良くなるとされています。
ロンドンで行われたある調査では、バイリンガル環境に置かれた幼児は、そうでない幼児に比べて吃音障害がある割合が多いことが分かったのです。
今回の研究では、ロンドンに住む317人の吃音障害がある子どもたちを調査対象としているが、なんと全員が4~5歳の時期に吃音が始まっていた。そのうち69人(21.8%)は、家庭では英語以外を話すバイリンガルだった。また、38人は英語が話せない親からの学習を強いられており、うち15人は5歳までに親の母国語(英語以外)しか話せなかった。つまり、5歳未満の幼児が外国語を学習して「バイリンガル」になることによって、吃音障害が始まる可能性が高いということになる。ただし、この研究は吃音障害となる原因までは明らかにしていない。
【実録】幼児期に外国語を教えると○○になる! 筆者の息子も大変なことに… 早期英語教育の致命的デメリットが判明(最新研究)
実は私も、6歳年上の兄も、吃音障害がありました。
緊張している、していないに関わらず、発話をする際にどもってしまうのです。
かなり社交的でおしゃべりで出しゃばりな私なのですが、この症状は突発的に出てくるので、本当に恥ずかしかったです。
気の知れた友達や家族の前でも、話したいことがパッと言えないのはもどかしいし、授業中先生に当てられて何かを発表するなんて時は本当に地獄でした😭
不思議と20歳前後の頃、いつの間にか治っていました。
他の研究では「新しい言語を学ぶことによって吃音の症状が緩和する」というものもあり、ちょうどこの頃、韓国語やフランス語など、新しい言語に本格的に手を出した時期だったので、一理あるのかも知れません。
吃音障害に関しては、原因や効果的な治療法など解明されていない点が多いので、はっきりしたことは言えませんが、バイリンガル環境にも一因があると考えて良さそうです。
まとめ〜何事にも一長一短がある〜
何事にも一長一短があります。
大人になってから外国語を学ぶ苦労をした人ほど「この苦労をさせないで済むのなら」とバイリンガル教育を選択する親がいるかも知れません。
また自ら選択をしたのではなく、「しかたなく」子供をバイリンガル環境に置く親もいるかも知れません。
ただバイリンガル教育には軽んじられる「負の可能性」があるということについて、何かのご参考になったら嬉しいです。