わた
日本では、フランス語🇫🇷・ドイツ語🇩🇪・中国語🇨🇳に並び、第二外国語として長年地味に不動の人気を誇るスペイン語🇪🇸。
そんなあなたに、スペイン語ネイティブのわたが「ディープな目線シリーズ第2弾」として、スペイン語の魅力についてご紹介します!
・スペイン語をこれから勉強してみたい人
・スペイン語を学習中の人
・まだ知らない「スペイン語」の一面に出会いたい人
5億人のスペイン語話者〜広大なスペイン語圏〜
世界話者ランキング第3位
今回参考にしたのは、少数言語の研究・開発・記録を行なっている非営利団体、国際SILのEthnologueの統計(2017年)なのですが、
スペイン語話者数は中国語、英語に次ぐ第3位:5億2700万人です!
ある言語がどれだけの人によって話されているかの統計方法は、実は非常に複雑です。
その言語のネイティブスピーカーなのか、幼少期以降に習得したのか、生活に困らない程度話せるのか、など、はっきり線引きをすることが困難です。
また世界には、政治的・民族的理由などにより、言語学的には同じ言語であっても、二つの異なる言語として数えられていたり、またその逆のパターンもあります。
そのため、ひとえに話者数ランキングといっても、様々な基準があるのです。
大陸をまたぐスペイン語
「スペイン語」と聞くと、真っ先に浮かぶのはヨーロッパ・イベリア半島のスペイン🇪🇸という方も多いかもしれません。
しかし、実はスペインだけではなく、中南米など20カ国以上で使われているんです!
なんと世界でスペイン語が最も話されているのは①メキシコ🇲🇽(約1億3000万人)!
続いて、②アメリカ🇺🇸の6,000万人、③コロンビア🇨🇴の5,000万人、そしてようやく④スペイン🇪🇸の4,700万人なんです👀
意外かもしれませんが、アメリカ🇺🇸南部に行くと、街中でスペイン語が聞こえてきたり、空港はもちろん、レストランやカフェでスペイン語が通じます!
それもそのはず、現在のアメリカ人口の約15%がヒスパニック系(中南米にルーツを持つ人)で、50年後には全人口のなんと30%になるとも言われているんですよ。
また、国連の公用語(英語・フランス語・ロシア語・スペイン語・アラビア語・中国語)のひとつでもあります。
もちろん世界の英語話者規模に比べると少ないですが、世界的な言語であるということは間違いありません💪
日本語の中のスペイン語
わた
意外や意外、スペイン語由来の言葉が日本語にも潜んでいるんですよ👀
①カステラ (Castilla)
長崎名物・カステラ😋
ポルトガル人宣教師が室町時代末期に日本に持ってきた食べ物の一つです。
確かにポルトガル語(Castela)を経由したのですが、これは11世紀ヨーロッパ・イベリア半島(今のスペイン)のカスティーリャ王国(Castilla)を指した言葉が由来。
元々は「お城(castillo)」を意味するこの言葉は、カステラを焼くとき、大きく高く膨らむように願ったことから、この名前が付けられたそうです👀
ちなみにこのカスティーリャ王国で話されていた言語が「カステリャーノ(Castellano)」!
そう、スペイン語(Español)の別名ですよ♪
②ドン(Don)
2018年、世間を騒がせた紀州のドンファンがいらっしゃいましたが、この「ドン」はスペイン語の貴人・高位聖職者に対する尊称なんです😎
英語でいう「Mr.」に当たる言葉なのですが、姓の前につける Señor(セニョール)に対して、この Donは個人名に付けます👀
「ドンファン」はつまり、Don Juanで、スペインの伝説上のプレイボーイに由来します。
ちなみに女性にはDoña(ドーニャ)を使いますよ👍
③エルニーニョ現象(El Niño/La Niña)
日本を始め、世界中の気候に影響を与えるエルニーニョ現象。
「El」はスペイン語の男性単数形の定冠詞(英語「The」)「Niño」は男の子(英語「Boy」です。
このエルニーニョ現象が発生するのが12月のクリスマス頃であることから、イエス・キリストの生誕になぞらえてEl Niñoと名付けられました。
ちなみに真逆の現象のことをラニーニャ現象と呼びますが、La Niñaは「The Girl」、女の子のことです♀
このほか「おんぶ」hombro(肩)や「おじや」olla(鍋)など、かなり怪しい俗説もたくさんあります😅
真偽はさておき、単語を覚えるヒントにする分には良さそうですね💓(笑)
またポルトガル語🇵🇹から来た外来語の多くがスペイン語でも同じ発音である場合が多いので、つい「スペイン語由来??」と勘違いしてしまう外来語がたくさんあります。
カルタ(carta)、パン(pan)、ボタン(botón)、カッパ・合羽(capa)、タバコ(tabaco)など💡
日本人にやさしいスペイン語
母音は日本語と同じ5コだけ
英語やフランス語、中国語、のいわゆる曖昧母音に悩まされた方はいませんか?
わた
なぜなら、スペイン語の母音は「ア・イ・ウ・エ・オ」の5つのみだからです。
厳密に言うと、ウとオは日本語より口を尖らせて発音する、などの違いはあるのですが、「少しだけ滑舌良く発音する!」ぐらいの感覚でスペイン語の母音は綺麗に発音できるのです。
「書いてある通りに」読める
また読み書きにおいても、例えば英語などと比べると、楽チンこの上ないです。
英語では、”a”はアと読んだりエイと読んだり、”th”は濁ったり濁らなかったり、その単語の読み方を知らないと、正しく読めないですよね。
でもスペイン語は、基本的に書いた通りに読む、発音した通りに書きます。
しかも日本人にありがたいことに、ほとんどローマ字読みと同じなので、
Mi nombre es Carlos. (私の名前はカルロスです。)
という文はそのまま「ミ ノンブレ エス カルロス」でばっちり通じます!
スペイン語に特徴的な巻き舌の”r”も、巻かなかったからと言って、通じないことはないのでご安心を😌
ローマ字読みと違うのは、”j”を「じゃ行」ではなく「は行」で読んだり、”h”は書いてあっても無音など、いくつかあるのですが、例外的な読み方は基本的にないので、ルールさえ覚えれば、大丈夫です💪
詩的で素敵なスペイン語
性数一致のミラクル
スペイン語の語順は、いわゆるSVO型(主語・動詞・目的語)です。
名詞の複数形に-sをつける点や、英語のbe動詞にあたるser/estar動詞が存在する点など英語に似ていると言えます。
また、スペイン語とフランス語はどちらもロマンス諸語に分類され、言語体系的に距離の近い言語なのですが、
以前「Ghoti?」英語の気まぐれなスペルの裏事情でも触れたとおり、英語は歴史的に語彙面でフランス語の影響をかなり受けているため、英語とスペイン語の語彙も類似している部分が多くあります。
しかし、決定的に違う部分があり、それはロマンス諸語に特徴的な性数一致です!
スペイン語の名詞は全て男性名詞と女性名詞に分けることができます。
padre(父)であれば男性名詞、madre(母)であれば女性名詞、というふうに、生物学的な男女で分けるあたりは想像できると思うのですが、
例えば、espejo(鏡)は男性名詞、silla(イス)は女性名詞、のように、無機質なものにも例外なく全てに文法上の性が割り振られています。
その名詞が”a”で終われば女性名詞、”o”で終われば男性名詞、という大まかな決まりはあるのですが、”e”で終わるものや、子音で終わるものなどもあるので、結局は覚えなければいけません。
そして、その名詞を修飾する際、形容詞も名詞の性や数に合わせて形を変えるなければいけないのですが、これこそが性数一致です。
詩人とラッパーにはありがたい言語
と思ったそこのあなた!!(笑)
スペイン語の魅力のひとつ、それはこの性数一致がもたらす音の美しさにあるのです。
形容詞を名詞に合わせて形を変える、と言いましたが、多くの場合、韻を踏むことになります。
例えば、 “rosa” (バラ)と”hermoso” (美しい)そして”rojo”(赤い)という単語。
“rosa”は女性名詞なので、形容詞”hermoso”と”rojo”は形を変え、”hermosa”と”roja”になります。
「その美しい赤いバラ」であれば、
“la hermosa rosa roja”(ラ エルモーサ ローサ ローハ)
「その美しいバラ(複数)」であれば、
“las hermosas rosas rojas”(ラス エルモーサス ローサス ローハス)となるわけです。
形容詞と名詞の順番は少々複雑なので割愛しますが、このようにして、ひとつの名詞に合わせて見事なまでにそのまわりの言葉がその名詞の色に染まっていくわけです。
詩人の皆さんはもちろん、ラッパーの皆さんにとってはかなりありがたい言語なのではないでしょうか(笑)
動詞活用地獄へようこそ
英語だと、be動詞の活用以外で気をつけるのは、とりあえず三人称単数現在形の”s”と過去形の”ed”、あとは不規則動詞ぐらいでしょうか。
なんとスペイン語は、すべての時制に6パターンの人称に合わせた活用があるのです😱
現在形であれば、例えば、comer(コメール:食べる、ダジャレじゃないですよ)
一人称単数 | como | 一人称複数 | comemos |
二人称単数 | comes | 二人称複数 | coméis |
三人称単数 | come | 三人称複数 | comen |
エグすぎる動詞活用
英語だと助動詞will+不定詞などを使って、未来形が作れますが、スペイン語は、そのような便利な助動詞を使わずに、動詞自体を活用させます。
have/had/will have+過去分詞でつくる完了時制も、haveにあたるhaber自体を「6つの人称×それぞれの完了時制」で活用させます。
- 直説法現在
- 直説法現在完了
- 直説法線過去
- 直説法過去完了
- 直説法点過去
- 直説法直前過去完了
- 直説法未来
- 直説法未来完了
- 直説法過去未来
- 直説法過去未来完了
- 接続法現在
- 接続法現在完了
- 接続法過去(ra/se形)
- 接続法過去完了(ra/se形)
- 接続法未来
- 接続法未来完了
以上がスペイン語の時制です。
動詞だけの活用で時制が決まるパターンが9時制と、haberの活用形と動詞の活用形の組み合わせで作る完了時制が9時制あります。
単純計算で、一つの動詞を全ての時制で表現できるためには、「6つの人称×18時制」=108の形を知らないといけないわけです。
ちなみにこれに命令形が+2の110ですね。
実質的にはhaberとの組み合わせなので、この数よりかは少なくなりますが…
わた
ただ、あまりフォローにならないかもしれませんが、性数一致でリズミカルに韻を踏む言語だけあって、動詞の活用もリズミカルに覚えれば、比較的楽に覚えられると思います👌(笑)
おわりに
わたにとってスペイン語は日本語と並ぶネイティブ言語なので、実際に話したり、聞いたり、読んだりするときに、意識することはなかったですが、今回まとめてみて、改めて奥が深く、広い言語だなぁと思いました。
記事後半では読者の方をかなりひるませてしまったかもしれませんが、スペイン語の魅力が読者の方に少しでも伝わったら嬉しいです。
【2018年度春】まいにちスペイン語《入門編・応用編》へ¡Bienvenidos!
スペイン語ネイティブはポルトガル語・フランス語・イタリア語が理解できるか検証!
スペイン語の歴史や方言、語源の不思議など、広く深く知りたい方は、岡本信照著『スペイン語の世界』がオススメです😊
ラテン語からの変化・アラビア語の影響・文学など幅広く掘り下げていて「へぇ〜!」を連発してますw
特に中南米スペイン語の多様性の背景には目から鱗👀
読み物としては少し固めですが、文法以外の目線からスペイン語を知ることができますよ📚