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スペインと中南米のスペイン語の違いって何?なんで違うの??

この記事を書いた人
わた
マルチリンガール

10以上の言語と戯れるマルチリンガル(多言語話者)帰国子女。日本語とスペイン語のネイティブスピーカーで、英語はニアネイティブ。大学時代に交換留学生として1年間韓国へ留学。中高生の受験対策指導、社会人向け個別指導など英語講師としての指導実績多数。2020年からはオンラインで世界中の生徒に日本語を指導。TOEIC960点、スペイン語実務翻訳士。当ブログでは多言語学習や海外生活の記事を中心に執筆。最近はスウェーデン語にハマっている。

わた

こんにちは!マルチリンガールわた (🐤@norinoricotton)です😘

スペイン語を勉強し始めると、最初に直面するのが「スペイン🇪🇸のスペイン語」と「中南米🌎のスペイン語」の違い問題ですよね😅

イメージとしては英語にアメリカ英語🇺🇸とイギリス英語🇬🇧、さらにはオーストラリア英語🇦🇺などがあり、それぞれに微妙な差があるのと似ています。

どちらかに決めて学習を進める方がほとんどだと思いますが、そもそもこの二つ:

代名詞が違う…?

動詞の活用が違う…??

発音が違う…???

語彙が違う…????

何だかよく分かりませんよね😅

また、スペインと中南米でスペイン語がなぜ違うのか、不思議に思ったことはありませんか?

わた

実は私もつい最近まで、違いは知っていながらも、なぜ違うのかを知りませんでした😳

今回は、「スペイン🇪🇸のスペイン語」と「中南米🌎のスペイン語」の違い、そして、なんで違いがあるのか、その背景に迫ります!!

この記事はこんな人にオススメ

・これからスペイン語を勉強しようと思っている人

・スペイン語を学習中の人

・「スペイン🇪🇸のスペイン語」と「中南米🌎のスペイン語」の違いが気になる人

マルチリンガルCottonが導く【スペイン語】のディープな世界

「スペインのスペイン語」と「中南米のスペイン語」の違い

小さな島国である日本でさえ、北から南まで多様な方言に富んでいますよね。

ましてやスペイン語は、スペイン🇪🇸だけではなく、大西洋を越え、南北アメリカ🌎やアフリカなど20ヶ国以上で話されている言語。

少数言語の研究・開発・記録を行なっている非営利団体、国際SILのEthnologueの統計(2017年)によると、中国語、英語に次ぎ、スペイン語話者数は第3位:5億2700万人です👀

日本語と比べたらスケールが違いすぎます💦

わた

違いがないわけがないんです😅

それでは「スペインのスペイン語」と「中南米のスペイン語」の代表的な違いを見ていきましょう👀

人称代名詞が違う

一番目立つ違いは、人称代名詞の違いです!

スペイン語では、「あなた・あなたたち」にあたる人称代名詞を親称 tú と敬称 usted で使い分けます。

親称と敬称は、厳密には日本語の敬語・タメ口(対等語)とはニュアンスや使い分けが違うのですが、イメージは似ています👀

ポイントは、この人称代名詞の複数形が、スペイン🇪🇸のスペイン語では親称 vosotros/ vosotras と敬称 ustedes の二つがあるのに対して、中南米🌎のスペイン語では ustedes一択!

スペインの人からしたら、個人的には親称のtúで話すのに、他の人が含まれる時は突然よそよそしく感じる、みたいな感じになってしまいます😅

スペイン🇪🇸スペイン語の人称代名詞
私は yo 私たちは nosotros
nosotras
君は 君たちは vosotros
vosotras
彼は él 彼らは ellos
彼女は ella 彼女らは ellas
あなたは usted あなたたちは ustedes
中南米①🌎スペイン語の人称代名詞
私は yo 私たちは nosotros
nosotras
君は 君たちは ustedes
彼は él 彼らは ellos
彼女は ella 彼女らは ellas
あなたは usted あなたたちは ustedes

「中南米」と一括りで説明していますが、実は上の表はメキシコ🇲🇽、ベネズエラ🇻🇪、コロンビア🇨🇴、エクアドル🇪🇨、ペルー🇵🇪、チリ🇨🇱などの地域の話(表では中南米①としています)。

中南米🌎スペイン語にはもう一つ特徴的な人称代名詞が存在します。

親称 tú の代わりに vosを使う地域があるのです。

南米のアルゼンチン🇦🇷、ウルグアイ🇺🇾、パラグアイ🇵🇾、そして中米のグアテマラ🇬🇹、ホンジュラス🇭🇳、エルサルバドル🇸🇻、ニカラグア🇳🇮、コスタリカ🇨🇷などで見られる話し方です👀

これらの地域では、以下の表(中南米②)のような人称代名詞になります。

中南米②🌎スペイン語の人称代名詞
私は yo 私たちは nosotros
nosotras
君は vos 君たちは ustedes
彼は él 彼らは ellos
彼女は ella 彼女らは ellas
あなたは usted あなたたちは ustedes

使用されている国を挙げましたが、①と②の使用は、はっきり境界が引けるわけではないんです💦

つまり「この人は〇〇人だから、vosを絶対使う・使わない」とは言えません。

例えば私が住んでいたペルー🇵🇪ではvosはほぼ聞かれない代名詞ですが、チリ🇨🇱やボリビア🇧🇴、コロンビア🇨🇴の一部の地域では同じ国内でもtúとvosが混在していたりします。

またアルゼンチン🇦🇷では専らvosしか使われません。

わた

二人称は一筋縄ではいかないんです😅

動詞の活用が違う

さて、お気付きの人もいるかもしれませんが、代名詞が違うということは、当然動詞の活用も違うということです(笑)

以下にスペインと中南米のスペイン語で違う二人称(親称)の動詞活用のうち、直接法現在形の活用のみを比較してご紹介しますw

スペイン🇪🇸スペイン語の二人称(親称)動詞活用
君・君たち\不定詞 hablar tener venir
hablas tienes vienes
vosotros
vosotras
habláis tenéis venís
中南米①🌎スペイン語の二人称(親称)動詞活用
君・君たち\不定詞 hablar tener venir
hablas tienes vienes
ustedes hablan tienen vienen
中南米②🌎スペイン語の二人称(親称)動詞活用
君・君たち\不定詞 hablar tener venir
vos hablás tenés venís
ustedes hablan tienen vienen

スペインのスペイン語のvosotros/ vosotras の代わりに中南米のスペイン語で使われるustedesの活用は、敬称 ustedesと活用が同じです!

つまり中南米①では、人称による活用変化は5種類のみ💡

一方、中南米②のvosは少し特殊な活用をします。

vosotros/ vosotrasの活用からiを抜いたような活用ですね👀

当然、他の時制でもそれぞれ動詞活用をしなければなりませんが、vosの動詞の活用形は地域によって異なるそうです。

発音が違う

スペイン🇪🇸と中南米🌎のスペイン語の発音の一番の違いは、“c” と “z” の発音でしょうか👄

スペインではこれらの音は英語の “th” のように上の前歯と舌に当てるようなイメージで発音します!

一方、中南米では “s” と同じように発音します。

カタカナで書こうとしたら、どちらもサ行になってしまいますが、実は中南米のスペイン語話者も”s” と書くときと発音が同じになってしまうため、

わた

あれ?この単語はs? c?

と考えてしまうこともあります(笑)

cebolla(タマネギ)

🇪🇸


🌎

feliz(幸せな)

🇪🇸

🌎

ここまで来てなんですが、実はスペイン🇪🇸でも南部のアンダルシア州周辺では、中南米🌎のように “c” や “z” を “s” と同じように発音する地域があります😅

語彙が違う

アメリカ英語とイギリス英語で同じ物を指すのに単語が違うものが無数にあるように(例:🇺🇸vacation 🇬🇧holiday、🇺🇸soccer 🇬🇧football)スペイン語でもスペイン🇪🇸と中南米🌎で単語が違うものがあります。

代表的なものをいくつかご紹介します♪

意味 スペイン🇪🇸 中南米🌎
ジャガイモ patata papa
駐車する aparcar estacionar/parquear
自動車 coche carro
バケツ cubo balde
運転する conducir manejar
melocotón durazno
怒った enfadado enojado

どちらも通じるものも中にはありますが、例えば中南米(ペルー🇵🇪)育ちの私には、スペイン🇪🇸のスペイン語の語彙が変に聞こえたり、おかしく聞こえたりすることがよくあります(笑)

わた

スペイン人にもそう思われてるんでしょうね😂

また、当然ですが、中南米も広いので国や地域によって、その地域でしか使われない単語や表現がたくさんあります。

実は最近わややぁさん🐤(@sappawayya)のツイートを楽しみにしています💕

わややぁさんはメキシコ🇲🇽、ペルー🇵🇪、パナマ🇵🇦など中南米の在住経験がおありの日西英通訳・翻訳者なのですが、「生きたスペイン語」ツイートにはいつもニヤニヤしております😊(笑)

【TOEIC】イギリス・オーストラリア英語で要注意の単語発音7選【音声付き】




なんでこんなに違うの??

スペイン語圏に旅行をしたり、スペイン語圏の人との交流を通して、

スペインと中南米のスペイン語の違いなんて知ってるよ〜

という方も多いかもしれません。

では!なんでこの違いがあるのでしょう??👀

わた

私もつい最近まで、違いは知っていながらも、なぜ違うのかを知りませんでした😳

vosは15世紀スペインから来た!

中南米のスペイン語は、1492年のコロンブスのカリブ海到来の時期に遡ります🕰

中南米の地域が次々とスペインの植民地になっていった時代、当然ながら支配者たちが話すスペイン語も地域に急激に浸透していきました。

そこで、先ほどご紹介したアルゼンチンなどの地域で使われる二人称代名詞vos。

実は、このvosも15世紀のスペインからもたらされたものなのです。

中世のスペイン語では、「私たち」は nos、「あなたたち」は vos でした👀

その後、otros(他の)という言葉と共に使われるようになり、現在の nosotros、 vosotros という単語が生まれました。

vos は複数形でありながら、中世では単数の相手に敬称として使われていたため、この用法が敬称の意味が薄れた状態で中南米に渡り、広まったのです!

一方、スペインでは vos の使用は廃れ、古語と化し、 tú が取って代わりました

じゃあ、なんで中南米で vos が残っている地域と tú が使われる地域があるの?

それは、植民地時代に開拓時期が早く、スペイン本国との交易が密にあった地域であったかどうかに関係しています💡

例えば、メキシコシティー🇲🇽やペルー🇵🇪のリマはスペイン王国の副王領の中心地だったので、スペイン本国から官僚が派遣され「本場」のスペイン語と常に接していました。

そのため、スペインで起こった vos から tú への言語変化にも対応し、ある意味スペインのスペイン語に近い言葉が話されていたのです。

一方、副王領の本拠地から地理的に距離の遠い地域では、スペインでの言語変化に影響されることなく、vos が残ったと考えられます👀

【黄金の国ペルー】ってどんな国?16年住んだ帰国子女が語るその魅力



発音はなんで違うの?

先ほどご紹介した“c” と “z” の発音の違いですが、これも14世紀以降、中南米に到来したスペイン人に遡ります⏰

スペイン🇪🇸南部のアンダルシア州周辺では、中南米🌎のように “c” や “z” を “s” と同じように発音する地域があるのですが、それもそのはず、中南米に当初来た多くのスペイン人がアンダルシア出身者だったのです!

16世紀から19世紀まで続いた植民地時代、スペインと中南米をつなぐ唯一の交通手段は船でした⛵️

現在外国に行くなら国際空港や税関を通らないといけないのと同じように、当時も、税関・貿易管理・裁判所を兼ねたインディアス通商院(Casa de Contratación de las Indias) を手続きをし、通過する必要がありました。

そのインディアス通商院があったのがアンダルシア州の港町セビリアでした。

また、15世紀末、イスラムからの国土回復戦争であるレコンキスタの終結を受けて職を失った多くの傭兵も中南米に渡りました。

渡航手続きにはかなりの時間を要したため、スペイン中から集まった人たちも、一定期間セビリアに滞在することになり、アンダルシア方言に影響されて中南米に渡ることになったのです。

中南米のスペイン語の発音がアンダルシア地方と似ているのも納得ですね😅

語彙はなんで違うの?

語彙の違いにも、多くの背景があります!

①先ほどの vos のように、スペインでは古語として廃れ、別の単語に取って代わった例は、他にもあります(桃➡︎🇪🇸melocotón 🌎durazno、怒った➡︎🇪🇸enfadado 🌎enjojado)。

②また、スペインから中南米へ移動する2ヶ月もの船上生活の経験から、海事用語が中南米に広まり、定着した例もあります(捨てる➡︎🇪🇸arrojar 🌎botar、結ぶ➡︎🇪🇸tirar 🌎jalar)。

③そしてアメリカ英語の影響も非常に大きいです。

地理的にも経済的にも政治的にもアメリカの影響を受け続けている中南米は、近代以降の用語で英語的な単語や用語を使うようになりました(パソコン➡︎🇪🇸ordenador 🌎computadora、自動車➡︎🇪🇸coche 🌎carro)。

この他にも、スペイン人が来る前から住んでいた先住民の言葉に影響されたり、スペイン以外からの移民(イタリア、ドイツ、ポルトガルなど)にも影響されました。




まとめ〜スペイン語って広い!深い!〜

同じスペイン語圏でも、これほどまでも千姿万態なスペイン語。

スペイン語の「標準」を規定しているスペイン王立言語アカデミー(Real Academia Española:RAE)は長い間、スペイン本国のスペイン語を規範とみなす態度を取っていましたが、21世紀に入り、その態度を改めました。

世界に広がるスペイン語のバリエーションに優劣を設けない公的な態度を取るようになったのです👍

スペイン人と中南米のスペイン語話者たちは、お互いの話すスペイン語にどこかで優劣をつけて来た歴史があるので、一スペイン語話者の私としては、なんだかRAEがとった姿勢が嬉しいです。

「言語は生き物」と言われるように、今でもスペイン語は日々変わっています。

「覚えることが多くてめんどくさい」と思ってしまったらそれまでですが、広くて深ーいスペイン語の世界、面白いですよ😊

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ちなみに、今回の記事の、特に「スペインと中南米の違いの理由」については、岡本信照著『スペイン語の世界』を参考に書きました✏️

ラテン語からの変化・アラビア語の影響・文学など幅広く掘り下げていて「へぇ〜!」を連発してしまうぐらい面白く、目から鱗でした。

読み物としてはだいぶ固いけどオススメです😊

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